まほろばで君と

ジェッターマルスの歌詞と未来予想図

 1970年代後半の小学校低学年の頃、手塚治虫のアニメで「ジェッターマルス」という鉄腕アトムのリメイク版が放送されていた。すごく昔のアニメだけど、先日、「マルス2015年」という主題歌の歌詞がふと浮かんだ。

♪ひかりまぶしい日本にひとつのいのちがはばたいた その名はマルス ジェッター・マルス 時は2015年

当時、2015年は何歳なのか計算したら、おっちゃんになってると思ったのを覚えている。幼かったから、そう思っただけで特にそれ以上のことは考えなかった。

この歌詞が浮かんだのは今が初めてじゃなく、高校2年の時にも何故かふと浮かんだ。その時の情景は今もハッキリ覚えている。

 

 夏休みに部活の練習をする時、バレー部員以外、その校舎の棟には誰もいなかった。教室で練習用のユニフォームに着替えて(部室はグランドの中の小さな別棟に一応あったけど、わざわざそこに行くのが面倒だから、代々全く使っていない)、体育館に行く途中だった。

その教室から体育館までの5分ほどの間にその曲が浮かんで、2015年の自分はどうなってるんだろうと思った。それと同時に高校卒業後どうしてるのかと思った。年に一度ある進路調査で進学希望と書いて渡したけど、その時点で進路を決めてなかった。

大学に行けると確信してなかったし(経済的な意味で)、高卒で就職するのは、この高校が最終学歴になるのかと思ったら嫌だった。誇れるようなレベルの高い高校じゃない(中学時代に家庭のことで病んでなかったら、自分は本来こんなレベルじゃないと思ってた)というのが理由だった。そんな訳で、2015年の青写真、イメージが全く湧いてこなかった。

だから、高2までに将来の具体的なイメージがある人はすごいと思った。小・中学校で仲が良かった友達のお姉さん(5歳上で初めて女性とデートした相手)が看護科の公立高校を卒業して神戸市立看護短大に通ってたけど、中学の時に進路を決めて偉いなぁと思ったし、皇宮警察(いわゆるSP)を目指した同級生(実際になった)もすごいなぁと思った。

でも、高2の時点で将来何になりたいかを本当にハッキリ決めている人ってどれぐらいいるんだろうか?とりあえず大学に行こうぐらいに思っている人が少なくないんじゃないだろうか?

 

 僕がなりたいと思った職業を言うと、小学生の時は考古学者になりたかった。そういう研究をすることに憧れた。それに、子供の頃から大人になった今も、「研究」という言葉にすごく惹かれるところがあって、子供の浅はかな考えだが、研究したいと漠然と思ってた。

中学の時はPAエンジニアになりたかった。PAはパブリックアドレスの略で、コンサートなどの音響に関する仕事。中学3年の時に授業参観で、どんな職業に就きたいかというテーマで話すというのがあって、事前に書いて提出して、授業で当てられて説明した記憶がある。

高校時代、2年の時はコピーライターに憧れた。大した動機がある訳じゃなく、書くのが好きということと、おしゃれな匂いがするという軽い気持ちで、非現実的だった。

3年の時と浪人時代はテレビ局のアナウンサーになりたいと真剣に思ってた。中学時代に放送部に入ってて教科書を読む声がいいと言われたことと、故・逸見政孝さんの生い立ちなども書かれた本を読んで、大学受験期の自分にとって大いに共感する部分があって、自分もアナウンサーになって見返したいと強く思ってたことが動機だった。大学受験がパーになったから諦めざるを得なかったけど、今思うと、アナウンサーは最終面接あたりで親も同席するらしいから、ある程度、家柄も関係するだろうし、素養や能力があろうとなかろうと、どっちにしろ無理だったんだろう。

 

 おそらく僕の20歳ぐらい下が「ゆとり世代」で、その後は「さとり世代」と呼ばれるようになった。10代の頃は難しめの目標でも、それに向かって必死に努力するのが正解だと思っていた。しかし、さとり世代はそんな風には考えず、リスクのない目標設定をするのかもしれない。その方が未来予想図を描きやすい。それを思うと僕は甘かったのかもしれない。

ハッキリと未来予想図を描いたのは高3の時で、しかも難しいものだった。でも、負けることはあまり考えなかった。それを考えること自体が負けだと思っていた。それに、「この生活から抜け出すために受験勉強をしている」という思いが強かった。

 

 自分の人生を振り返ると、漠然とした未来の予想しかできなかった。大学に進学して、就職活動して、新卒でそこそこの会社に就職して、30歳ぐらいで結婚して・・・という周囲の友人の多くが実際にそうなったのと同じものをイメージしていた。大学に進学していたら自分もそうなっていただろう。何もかもおかしくなった原因がそこにある。だから、親の死後も許せず、のた打ち回るような怒りが込み上げる。こんな気持ちで生きてゆくなら死んだ方がいい。

  

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ジェッターマルス OP「マルス2015年」スティーブン・トート、こおろぎ'73