ソーシャルワークの理論史における統合化の背景とその意味や意義について、2007年6月に書いたレポートの一部を省略したものを掲載します。
【社会福祉援助技術論1-2】
ソーシャルワークの理論史における統合化の背景とその意味や意義をまとめる。
人間社会はその形成に伴って、人が互いに援助し合う事が様々な形で行われてきた。その原初的な形態は共同体内での相互扶助で、続いて慈愛や博愛の精神による援助があった。
19世紀末の産業革命後の社会では、大量の社会問題が生じ、貧困問題は公的な救済事業のみでは対応できないほど深刻化していた。そのため、慈愛・博愛が組織化して、民間社会福祉が発達する契機となった。慈善組織協会やセツルメント運動などである。
慈善組織協会(COS)は、1869年にイギリスに設立、77年にアメリカに移入され、急速に広まった。次に、セツルメント運動は、イギリスでは1884年設立のトインビーホールで、アメリカでは89年に設立したハル・ハウスで展開された。しかし、イギリスでは問題点もあった。
社会経済的背景や民族の歴史や文化の違う人々の間で生活の全体に関わる援助をするのは非常に困難な課題であり、科学的・専門的知識と系統だった援助技術が必要となる事は明らかであった。
20世紀初頭、アメリカで各分野のソーシャルワーカーの組織化づくりが始められた。
M.リッチモンドは個別援助活動の方法を明確にし、ソーシャルケースワークは、人間と社会環境との間を個別に、意識的に調整する事を通して、パーソナリティを発達させる諸過程からなっていると定義した。
さらに、個別援助を直接的活動と、社会関係を通じて働きかける間接的活動の両方からなるとした上で、個別的援助活動の社会的側面を重視し、社会福祉援助技術の専門化に画期的な貢献をしたのである。
20年代には、社会福祉実践分野と社会福祉援助技術の2つの面で専門分化が進められた。実践分野の分化につれて、個別援助技術、集団援助技術、地域援助技術の違いが明らかになってきた。それは同時に理論的な基礎確立の時期であったともいえよう。
これら専門分化の過程を経て、重要な契機となったのが、22年に打ち出された「ジェネリックースペシフィック」という概念である。具体的には、個別援助技術のジェネリックな側面とは、各分野共通の概念、知識、方法、社会資源の体系であり、スペシフィックな側面とは、様々な場面の特定の脈絡に応じて適用することである。
さらに、これらは相互依存関係にあり、いずれも欠く事ができないとされている。当時は社会福祉実践分野の統合化の議論であったが、後には援助技術の統合化が盛んになった。
第二次世界大戦がもたらした社会福祉援助技術への影響として、戦争の精神的痛手を負った人の治療の為の精神医学の発展と社会福祉援助技術の治療的アプローチの発展、迫害を逃れてきたユダヤ系移民の中から社会福祉援助の優れた指導者が生まれた事、一部の社会学者からアメリカ民主主義への批判があった事が挙げられる。
以上の背景により、55年、全米ソーシャルワーカー協会が結成され、専門職団体の統合化が進められたのである。
その後、一般システム論と生態学であるエコロジーとが融合したエコシステム論が広まった。エコシステム論とは、一般システム論がもつ緻密な分析力と説得力に加え、環境に生きる生態としての人間を生活主体、生活世界、環境世界の三者の有機的連携として統合的に捉える理論である。
近年、ソーシャルワークが統合化された事などを背景にジェネラルソーシャルワークという理論が生まれた。ジェネラルソーシャルワークは、実践に共通の基盤や視点を体系化、組織化したもので、対象は全ての人々であり、生活と質にまで関心を寄せるものとなったのである。
私見として・・・
レポート原文1587字